PDF/AとPDF/Xの違いをわかりやすく解説:長期保存・印刷入稿の国際規格ガイド【2026年版】
PDF/AはISO 19005規格に基づく「長期デジタルアーカイブ専用」フォーマットで、数十年後も確実に内容を再現できることを最優先に設計されています。PDF/XはISO 15930規格に基づく「商業印刷入稿専用」フォーマットで、印刷所での確実な色再現と出力適合性を保証するために設計されています。この2つのPDFサブセット規格は目的が根本的に異なり、誤った選択はアーカイブ障害・印刷ミスの直接原因になります。 日本では国立国会図書館(NDL)がデジタル納本にPDF/A-1bまたはPDF/A-2bを指定しており、電子帳簿保存法の長期保存要件にもPDF/Aが推奨されています。一方、印刷業界では2008年以降ほぼすべての印刷所がPDF/X-4形式での入稿を標準化しており、同人誌印刷・商業印刷・官公庁印刷物を問わずPDF/X-4が実質的な業界共通規格になっています。 両規格の具体的な差異を示すと、PDF/Aは外部参照・JavaScript・暗号化・動画音声を一切禁止し、フォント埋め込みとICCカラープロファイルの埋め込みを義務付けています。規格に準拠したPDF/Aは通常のPDFより10〜40%ファイルサイズが大きくなります。PDF/Xはフォント完全埋め込みとOutputIntent(出力インテント、印刷プロファイル)の指定を必須とし、バージョンによって透明度・RGBカラーの使用可否が異なります。本記事では両規格のバージョン別詳細・日本での使用実態・準拠ファイルの作成・確認方法を解説します。
PDF/AとPDF/Xの基本:規格の目的と背景
PDFは汎用文書フォーマットとして設計されましたが、特定の目的(長期保存・印刷入稿)に使う場合、通常のPDFでは「10年後に開けなくなる」「印刷所で色が違う」というリスクが生じます。これらの問題を解決するためにISO規格として策定されたのがPDF/AとPDF/Xです。 **PDF/Aが解決する問題** 通常のPDFには外部参照(External Reference)を含められます。たとえばフォントを「外部から読み込む」設定にしたPDFは、10年後にそのフォントが廃盤になったり、サーバーが閉鎖されたりすると正しく表示されなくなります。JavaScriptを含むPDFは実行環境が変わると動作が変わります。動画・音声を含むPDFは対応プレイヤーが必要で、将来の再生保証がありません。 PDF/Aはこれらの「将来の再現性を損なう要素」をすべて禁止することで、50年・100年後でも同一の表示を保証します。ISO 19005は2005年に初版(PDF/A-1)が制定され、2011年(PDF/A-2)、2012年(PDF/A-3)と拡張されています。名称の「A」は「Archive(アーカイブ)」を意味します。 **PDF/Xが解決する問題** 通常のPDFでRGBカラーで作成したデータを印刷所に入稿すると、CMYKへの色変換で意図と異なる色になるリスクがあります。フォントが埋め込まれていないPDFは印刷所の環境で代替フォントに置き換えられ、レイアウトが崩れます。透明効果を含むPDFは旧式のRIP(Raster Image Processor)で正しく処理できない場合があります。 PDF/Xはフォント完全埋め込み・OutputIntentの指定・カラースペースの明示を必須とすることで、「入稿したデータが印刷所で意図通りに出力される」ことを保証します。ISO 15930は2001年に初版(PDF/X-1a)が制定され、現在はPDF/X-4(ISO 15930-7:2008)が主流です。名称の「X」は「Exchange(交換・入稿)」を意味します。 **通常のPDFとの互換性** PDF/AおよびPDF/XファイルはXMPメタデータにサブセット情報(GTS_PDFAVersion、GTS_PDFXVersion等)を記録します。PDF/AはPDFビューアー(Adobe Acrobat、Foxit Reader等)で通常のPDFと同様に開けます。PDF/Xも同様に開けますが、OutputIntentの色域外の色が表示と印刷で異なる場合があります。両規格は互いに排他ではなく、PDF/A-2かつPDF/X-4の両規格に準拠したファイルを作成することも技術的に可能です(一部制約あり)。
- 1Step 1: ファイルの用途を確認する — 長期保存・行政提出・図書館納本 → PDF/A。商業印刷・同人誌入稿・官公庁印刷物 → PDF/X。それ以外の一般用途 → 通常のPDF
- 2Step 2: 必要なバージョンを特定する — 提出先・入稿先の要件仕様書を確認。国立国会図書館はPDF/A-1bまたはPDF/A-2b指定。一般的なDTP印刷所はPDF/X-4またはPDF/X-1a指定が多い
- 3Step 3: 作成ツールを確認する — Adobe Acrobat Pro、InDesign、Illustratorは両規格での書き出しに対応。LibreOffice・Microsoft Officeは名前を付けて保存時にPDF/A-1aオプションがある
- 4Step 4: 作成後に規格準拠を検証する — Adobe Acrobat ProのプリフライトまたはVeraPDFツール(無料・オープンソース)で準拠確認。非準拠項目がある場合は修正してから提出・入稿
PDF/Aのバージョン詳細:PDF/A-1・A-2・A-3の違いと選び方
PDF/Aには現在3つのバージョンがあり、それぞれ対応するPDF仕様バージョンと許可される機能が異なります。バージョン選択を誤ると提出要件を満たせない場合があります。 **PDF/A-1(ISO 19005-1:2005)** 基盤となるPDF仕様はPDF 1.4です。最も保守的な規格で、2005年制定当時の技術水準に基づいています。 準拠レベル: - PDF/A-1b(Basic):視覚的な再現性を保証。外部リソースなし・フォント埋め込み・sRGBまたはICCプロファイル埋め込みが必須。最も広く使われるレベル。 - PDF/A-1a(Accessible):1bの要件に加え、タグ付きPDF(Logical Structure)・自然言語指定・テキストの読み上げ可能性が必要。アクセシビリティ対応が求められる公的文書に使用。 PDF/A-1の制約(禁止事項): - 暗号化(パスワード保護)は一切禁止 - JavaScriptは禁止 - 外部コンテンツ参照は禁止 - 動画・音声・3Dコンテンツは禁止 - LZWとJBIG2圧縮の使用制限(一部制約あり) - 透明度(Transparency)は禁止 - レイヤー(Optional Content)は禁止 ファイルサイズへの影響:フォントとICCプロファイルの完全埋め込みにより、通常PDFより20〜40%ファイルサイズが増加します。 **PDF/A-2(ISO 19005-2:2011)** 基盤はPDF 1.7(ISO 32000-1)です。PDF/A-1の制約を維持しつつ、現代的な機能を追加しています。 準拠レベル: - PDF/A-2b(Basic):視覚的再現性の保証。 - PDF/A-2a(Accessible):タグ付きPDFと自然言語指定を追加。 - PDF/A-2u(Unicode):すべての文字にUnicodeマッピングが必要(テキスト検索・コピーの確実な対応)。 PDF/A-1から追加された機能: - JPEG2000圧縮の使用可(医療画像・地図などの高品質アーカイブに有利) - OpenType埋め込みフォントのサポート拡充(日本語フォントとの相性が向上) - 透明度の使用可(フラット化処理なしで格納可能) - レイヤー(Optional Content)の使用可(条件付き内容の表示切り替え) - デジタル署名の使用可(PAdESベース) - 別のPDF/Aファイルを添付可能 **PDF/A-3(ISO 19005-3:2012)** 基盤はPDF 1.7(ISO 32000-1)。PDF/A-2と同等の制約ながら、任意のファイル形式を添付できる点が最大の差異です。 最重要の追加機能: - **任意のファイルを添付可能**:XML・CSV・TXT・元のWordファイルなど、どのフォーマットでも添付ファイルとして格納できます。 この機能により、PDF/A-3は電子インボイス(e-Invoice)の標準フォーマットとして採用されています。EUのZUGFeRD規格やEN 16931規格ではPDF/A-3に請求書XMLデータを埋め込む形式が標準です。日本でも2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関連して、PDF/A-3ベースの電子インボイスへの関心が高まっています。Peppol(日本ではデジタル庁が推進する電子調達インフラ)でもPDF/A-3の利用が検討されています。 **PDF/Aバージョン選択の指針** | 用途 | 推奨バージョン | 理由 | |------|-------------|------| | 国立国会図書館納本 | PDF/A-1bまたはPDF/A-2b | NDL要件に明示 | | e-Gov・行政書類の長期保存 | PDF/A-2b | OpenType対応・デジタル署名可 | | 電子帳簿保存法対応 | PDF/A-2bまたはPDF/A-3b | 法的保存期間7年に十分対応 | | 電子インボイス(インボイス制度) | PDF/A-3b | XMLデータ埋め込みで自動処理対応 | | 医療文書の長期保管 | PDF/A-2b | JPEG2000対応で医療画像の高品質保存 |
- 1Step 1: 提出先または保存要件のバージョン指定を確認する — 国立国会図書館:PDF/A-1bまたはPDF/A-2b。一般的な行政書類長期保存:PDF/A-2bが現在の推奨。電子インボイス:PDF/A-3b
- 2Step 2: Microsoft OfficeでPDF/A-1として保存する — 「ファイル」→「名前を付けて保存」→「PDF」を選択→「オプション」→「ISO 19005-1に準拠(PDF/A)」にチェック。これでPDF/A-1bが生成される
- 3Step 3: Adobe Acrobat ProでPDF/A変換する — 「ファイル」→「別名で保存」→「PDF/A」→バージョン選択(A-1b、A-2b、A-3b)→保存。既存のPDFを変換可能で、非準拠要素(外部フォント・JavaScript等)は自動修正または削除される
- 4Step 4: VeraPDF(無料ツール)で準拠確認する — veraPDF.orgからダウンロード(Java環境が必要)。PDFをドラッグ&ドロップするだけでPDF/A-1b・A-2b・A-3b準拠を検証。非準拠項目はエラーメッセージで一覧表示される
PDF/Xのバージョン詳細:PDF/X-1a・X-3・X-4の違いと日本のDTP業界
PDF/Xには複数のバージョンがあり、日本のDTP業界では現在PDF/X-4が主流となっています。ただし、同人誌印刷所や一部の小規模印刷所ではPDF/X-1aを指定するケースもあります。バージョン別の制約を理解することが正確な入稿に不可欠です。 **PDF/X-1a(ISO 15930-1:2001 / ISO 15930-4:2003改訂版)** 最も保守的な印刷入稿規格です。PDF 1.3ベース(改訂版はPDF 1.4も可)。 主な要件と制約: - フォントの完全埋め込みが必須(サブセット埋め込みも可) - すべての画像データをCMYKまたはスポットカラーで統一(RGB・LABは禁止) - ICCプロファイルは埋め込み禁止(OutputIntentで出力インテントを指定) - 透明度は禁止(使用している場合は事前にフラット化が必要) - レイヤー(Optional Content)は禁止 - OPIコメントは禁止 - 暗号化は禁止 PDF/X-1aは「印刷所のRIPが確実に処理できる最小公倍数」として設計されており、旧式の出力機器でも問題なく処理できます。ただし、RGBデータをCMYKに変換する作業が制作側に課されるため、デザイナーのワークフローが煩雑になります。 **PDF/X-3(ISO 15930-3:2002)** PDF/X-1aの制約を緩和し、RGB・LABカラーをICCプロファイル付きで使用できるようにしたバージョンです。PDF 1.3または1.4ベース。 PDF/X-1aとの主な差異: - RGBおよびLABカラーをICCプロファイル付きで使用可能(印刷所側でCMYK変換) - 透明度は引き続き禁止 PDF/X-3は日欧の一部印刷所で使われましたが、透明度禁止の制約がデザイン表現の自由度を制限するため、現在はPDF/X-4への移行が進んでいます。 **PDF/X-4(ISO 15930-7:2008)—現在の業界標準** 現在の日本のDTP業界における事実上の標準フォーマットです。PDF 1.6ベース(ISO 32000-1対応)。 PDF/X-1aからの主な改善点: - 透明度(Transparency)の使用可能(ドロップシャドウ・グラデーション・オーバープリント効果をフラット化なしで格納) - レイヤー(Optional Content)の使用可能(版下の組み版情報を保持) - RGBおよびLABカラーをICCプロファイル付きで使用可能(OutputIntentで出力プロファイルを指定) - JPEG2000圧縮の使用可能 - OpenTypeフォント(CIDフォント含む)の完全対応(和文フォントのサブセット埋め込みに最適) PDF/X-4が日本のDTP業界で標準化された背景には、日本語組版の要件があります。Morisawa Fonts(游明朝・游ゴシック等)やKozuka Mincho(小塚明朝)などのOpenType和文フォントをサブセット埋め込みで確実に処理できる点が決定的でした。以前のPDF/X-1aでは和文フォントの扱いに問題が生じるケースがありました。 **日本の主要印刷所のPDF/X対応状況(2026年現在)** 大手商業印刷:グラフィック・プリントパック・ラクスル等 → PDF/X-4標準、PDF/X-1a互換 同人誌印刷:コミックマーケット対応印刷所(日光企画・栄光等)→ PDF/X-4または独自プリフライト 官公庁印刷物:PDF/X-1aまたはPDF/X-4(印刷所指定に従う) 学術誌・書籍:出版社・学会によってPDF/X-1aまたはPDF/X-4 **PDF/XとPDF/Aの主要比較** | 項目 | PDF/A-2b | PDF/X-4 | |------|---------|--------| | 目的 | 長期保存 | 印刷入稿 | | ISO規格 | 19005-2:2011 | 15930-7:2008 | | 基盤PDF | PDF 1.7 | PDF 1.6 | | 透明度 | 可 | 可 | | 暗号化 | 禁止 | 禁止 | | JavaScript | 禁止 | 禁止 | | 外部参照 | 禁止 | 禁止(OutputIntent例外) | | カラー | 任意(ICCプロファイル必須) | CMYK/RGB(OutputIntent必須) | | フォント埋め込み | 必須 | 必須 | | ファイルサイズ影響 | 通常比+15〜40% | 通常比+10〜30% |
- 1Step 1: 入稿先の印刷所からPDF/Xバージョンの指定を確認する — 最近(2020年以降)対応した印刷所はほぼPDF/X-4対応。入稿仕様書に明記されていない場合は問い合わせる
- 2Step 2: Adobe InDesignからPDF/X-4で書き出す — 「ファイル」→「書き出し」→「Adobe PDF(印刷)」→プリセットで「PDF/X-4:2008」を選択。カラー設定タブでOutputIntentを印刷所指定のICCプロファイル(例:Japan Color 2011 Coated)に設定
- 3Step 3: Adobe IllustratorからPDF/X-4で書き出す — 「ファイル」→「別名で保存」→「Adobe PDF」→PDFプリセットで「PDF/X-4:2008」を選択。文書の透明度を保持したまま入稿できる
- 4Step 4: Adobe Acrobat ProのプリフライトでPDF/X準拠確認 — 「ツール」→「印刷工程」→「プリフライト」→PDF/X-4プロファイルを選択して検証。非準拠項目(未埋め込みフォント・RGB画像等)が一覧表示され、一部は自動修正可能
日本での使用実態:国立国会図書館・電子帳簿保存法・DTP業界
PDF/AとPDF/Xが日本の各分野でどのように使われているかを具体的に解説します。制度・機関・業界の実態を把握することで、自分の業務に最適な規格を選べます。 **国立国会図書館(NDL)のデジタル納本** 国立国会図書館法に基づくデジタル出版物の納本では、PDF形式で提出する場合にPDF/A-1bまたはPDF/A-2bの準拠が求められます(NDL「電子書籍・電子雑誌の収集・提供に関する規定」)。NDLがPDF/Aを採用する理由は明確です:フォント埋め込み必須・外部参照禁止・JIS X 0208〜JIS X 0213(日本語文字コード)との互換性確保により、50年以上後でも確実に文書内容を再現できるためです。 電子納本の実務では:PDFファイルはISO 19005準拠であること。テキストが検索可能であること(スキャンPDFの場合はOCRテキストレイヤー付与)。メタデータ(タイトル・著者・発行年等)が適切に設定されていること。ファイルサイズの目安は1冊あたり通常50〜500MB(雑誌・写真集は例外として1GB超の場合も)。 **e-Govと行政文書のデジタルアーカイブ** デジタル庁が推進する「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2023年改訂)では、行政文書の長期電子保存にPDF/Aを推奨しています。国家行政組織の文書管理規則では、永久保存・30年保存に指定された文書の電子化にPDF/Aが適切とされており、各省庁の文書管理システムがPDF/A-2b対応を順次進めています。 公文書館(国立公文書館)では、電子的に作成された公文書のアーカイブにPDF/A-1bを採用しています。地方自治体でも独自の電子保存規程でPDF/Aを指定するケースが増えており、東京都・大阪府・愛知県等の主要自治体では文書管理システムのPDF/A対応が完了しています。 **電子帳簿保存法とインボイス制度** 電子帳簿保存法(2022年改正・2024年完全施行)は特定のPDFサブセット規格を義務付けてはいませんが、国税庁の解釈ではPDF/Aが「改ざん防止・長期保存」の観点で最も適切とされています。実務上の影響は以下の通りです:freee・弥生会計・MoneyForwardなどの主要会計ソフトはPDF/A-1b準拠のPDFを電子帳票として出力可能。請求書受領SaaS(Sansan、BtoBプラットフォーム等)はPDF/A形式での保存機能を提供。 2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、電子インボイスのPDF/A-3b活用が注目されています。PDF/A-3bに準拠した電子請求書はPDF表示(人間が読む)とXML添付データ(システムが処理する)を1ファイルに統合でき、手入力なしに会計システムへの自動取り込みが可能になります。デジタル庁が推進するPeppol電子調達インフラとの連携でも、この形式が検討されています。 **DTP・印刷業界の実態** 2008年にPDF/X-4規格が策定されてから、日本の印刷業界は数年かけてPDF/X-4への移行を完了しました。現在の日本の商業印刷市場(推計年間売上約7兆円)における入稿データ形式の構成比は、業界団体(日本印刷産業連合会)の調査でPDFが約78%、そのうちPDF/X準拠が約60%を占めています。 PDF/X-4が業界標準として定着した理由:日本語フォント(Noto Serif JP・游明朝・小塚明朝等)のOpenType対応が良好。透明度保持により、デザイン制作段階でのフラット化作業が不要。CMYKカラーとRGBカラーの混在データをOutputIntentで一元管理できる。国際的なプリプレスワークフロー(Esko、Kodak Prinergy等)がPDF/X-4にネイティブ対応。
- 1Step 1: 国立国会図書館への電子納本の場合 — NDLの「電子書籍・電子雑誌提出ガイドライン」を確認。PDF/A-1bまたはPDF/A-2b形式でAdobe Acrobat ProまたはInDesignから書き出す。メタデータ(タイトル・著者・発行年)をドキュメントプロパティに設定する
- 2Step 2: 電子帳簿保存法対応書類の保存 — 対応会計ソフト(freee等)からPDF/A-1b形式でエクスポート。スキャン書類はLazyPDFのOCRツール(/ja/ocr)でテキストレイヤー付与後にPDF/A対応ソフトで変換。タイムスタンプ付与は電子帳票保存サービスと連携
- 3Step 3: 商業印刷所への入稿(PDF/X-4) — InDesign・Illustratorの書き出し設定でPDF/X-4を選択。OutputIntentはJapan Color 2011 Coatedが国内標準(一般商業印刷・マット印刷)。印刷所のプリフライトチェックサービスを事前利用することを強く推奨
- 4Step 4: 同人誌印刷への入稿 — 入稿仕様書を必ず確認(印刷所によりPDF/X-1aとPDF/X-4が混在)。和文フォントのサブセット埋め込みを確認(Acrobatのプリフライトで「フォント一覧」確認)。RGBデータが含まれる場合はPDF/X-4または印刷所指定に従う
PDF/AとPDF/Xの確認・作成・変換方法:実践的ツールガイド
規格準拠PDFの作成・確認に使えるツールと実践的な手順を解説します。有料ツールと無料ツールの両方を紹介します。 **規格準拠の確認ツール** veraPDF(推奨・無料・オープンソース):PDF/Aの標準検証ツールとしてPDF AssociationとOpenPreservation Foundationが共同開発しました。veraPDF.orgからダウンロード(Windows/Mac/Linux対応、Java環境必須)。PDF/A-1a/1b、A-2a/2b/2u、A-3a/3b/3u、PDF/UA-1の全バージョンに対応。コマンドライン・GUIの両方で使用可能。企業の文書管理システムに組み込んで自動バッチ検証もできます。 Adobe Acrobat Pro(有料・月額2,380円〜):プリフライト機能でPDF/A(全バージョン)とPDF/X(X-1a、X-3、X-4)の準拠確認・自動修正が可能。「ツール」→「印刷工程」→「プリフライト」から目的の規格プロファイルを選択します。非準拠項目は一覧表示され、多くの項目は「フィックスアップ」機能で自動修正できます。 PDF/X-ReadyCheckerまたはPDFToolbox(有料):印刷業界専門の検証ツール。PDF/X-4対応のプリフライトプロファイルが充実しており、印刷所向けの専門的な検証が可能。 **PDF/A作成方法(ツール別)** Microsoft Word(Windows版):ファイル→エクスポート→PDF/XPSの作成→「オプション」で「ISO 19005-1に準拠(PDF/A)」にチェック。PDF/A-1bが生成されます。 LibreOffice Writer(無料):ファイル→エクスポート→PDFとしてエクスポート→「PDF/A-1b ISO 19005-1」または「PDF/A-2(ISO 19005-2)」を選択。完全無料でPDF/A準拠ファイルが作成できます。 Adobe Acrobat Pro:既存PDFを開いてファイル→別名で保存→PDF/Aを選択。バージョン(1b、2b、3b等)を選択して保存。LazyPDFのOCRツール(/ja/ocr)でテキストレイヤー付与後のPDFをAcrobatでPDF/A変換する組み合わせが実務では効果的です。 **PDF/X作成方法(DTP向け)** Adobe InDesign(最推奨):ファイル→書き出し→Adobe PDF(印刷)→標準で「PDF/X-4:2008」を選択。カラーマネジメントタブでOutputIntentにJapan Color 2011 Coatedを指定。フォントタブでフォントのサブセット埋め込みを確認(100%未満で埋め込み)。 Adobe Illustrator:ファイル→別名で保存→Adobe PDF→PDFプリセット「PDF/X-4:2008」。Illustratorは透明度の保持が完全にサポートされているため、PDF/X-4での入稿に最適です。 Ghostscriptを使ったPDF/A変換(コマンドライン・無料):LazyPDFのバックエンドでも使われているGhostscriptは、コマンドラインでPDF/A変換が可能です。ただし、複雑な文書での完全な規格準拠にはAcrobat Proによる検証が推奨されます。 **よくあるエラーと対処法** 「フォントが埋め込まれていない」エラー:Acrobat Proのプリフライト「フォントを埋め込む」フィックスアップで自動修正可能。発生原因は多くの場合、Windowsのシステムフォント(Meiryo、MS 明朝等)を使用した際の埋め込み設定ミスです。 「ICCプロファイルが見つからない」エラー:PDF/AではRGB画像へのICCプロファイル埋め込みが必須。PhotoshopでsRGBプロファイル付きで画像を保存してからPDFに配置します。 「外部リンクが含まれている」エラー:PDF/Aでは外部URLへのハイパーリンクのアクション設定が禁止(リンク注釈の表示は可)。Acrobat Proのフィックスアップ「外部コンテンツへのすべての参照を削除」で対処します。
- 1Step 1: 作成したPDFの規格バージョンをAcrobat Readerで確認する — ファイル→プロパティ→概要タブ。「PDF仕様」に「PDF/A-1b」や「PDF/X-4」と表示されれば規格準拠済み。表示がなければ未準拠の通常PDF
- 2Step 2: veraPDFで無料バッチ検証する — veraPDF.orgからダウンロードし、検証したいPDFフォルダを指定。「PDF/A-2B」等の規格を選択して検証実行。結果はHTML/XMLレポートで出力され、非準拠項目が一覧表示される
- 3Step 3: LazyPDFのツールをPDF/Aワークフローに組み込む — スキャン文書はOCRツール(/ja/ocr)でテキストレイヤーを付与後、Acrobat ProまたはLibreOfficeでPDF/A変換。ファイルサイズが大きすぎる場合は圧縮ツール(/ja/compress)で調整してから提出
- 4Step 4: 印刷入稿前の最終チェック手順 — 印刷所のウェブサイトからプリフライトプロファイルをダウンロードしAcrobat Proで検証。またはPDF/X-4書き出し時に「カラー変換」と「フォント埋め込み」の設定を再確認し、入稿前に印刷所のオンラインプリフライトチェックツール(多くの印刷所が無料提供)を活用する
よくある質問
PDF/AとPDF/Xの最大の違いは何ですか?
目的が根本的に異なります。PDF/A(ISO 19005)は数十年後も同じ内容を再現できることを保証する長期アーカイブ用規格で、外部参照・JavaScript・暗号化を全面禁止します。PDF/X(ISO 15930)は印刷所で確実に色再現できる入稿データを保証する規格で、OutputIntent(印刷プロファイル)の指定とフォント完全埋め込みを必須とします。
国立国会図書館への電子納本にはどのPDF/Aバージョンが必要ですか?
国立国会図書館(NDL)は電子書籍・電子雑誌の納本にPDF/A-1bまたはPDF/A-2bを指定しています。PDF/A-2bはOpenTypeフォント対応が強化されており、日本語フォント(Noto・游明朝・小塚明朝等)を含む出版物に特に適しています。Adobe Acrobat ProまたはLibreOfficeから無償で作成できます。
日本の印刷所への入稿にはPDF/X-4とPDF/X-1aどちらが適していますか?
2020年以降に設備を更新した印刷所はPDF/X-4が標準です。PDF/X-4は透明度・レイヤー・OpenTypeフォントに対応しており、現代的なデザインをフラット化なしで入稿できます。古い機器を使う小規模印刷所や同人誌印刷所の一部ではPDF/X-1a指定が残っています。入稿仕様書で必ず確認してください。
電子帳簿保存法の対応にPDF/Aは必須ですか?
必須ではありませんが、国税庁ガイドラインでは長期保存の観点からPDF/Aが最適とされています。freee・弥生会計・MoneyForwardなどの対応会計ソフトはPDF/A-1b形式での電子帳票出力機能を持っており、保存要件(200dpi以上・改ざん防止・検索機能)を満たす最も確実な方法です。
PDF/AファイルはパスワードによるAES-256暗号化を使えますか?
使えません。PDF/A規格はすべてのバージョン(A-1、A-2、A-3)で暗号化を完全禁止しています。理由は暗号化されたファイルは将来の解読保証がないためです。機密文書を長期保存する場合は、ファイルシステム暗号化(BitLocker・FileVault)またはクラウドストレージのアクセス制限でセキュリティを確保します。
PDF/A-3はインボイス制度(適格請求書)への対応に使えますか?
対応できます。PDF/A-3bは任意のファイルを添付できるため、PDF表示(人が読む請求書)にXMLデータ(システムが処理するインボイスデータ)を埋め込んだ電子インボイスを1ファイルで実現できます。EUのZUGFeRD規格がこの方式を採用しており、日本のPeppol対応電子調達でも同様の活用が検討されています。